■ 断熱膨張と断熱圧縮について |
ヒートポンプは気体を強制的に膨張、圧縮を繰り返すことでその気体の熱エネルギーを利用したシステムですが、その気体の膨張、圧縮は断熱膨張あるいは断熱圧縮の原理を利用しています。外からの熱の供給がない状態での気体の膨張、圧縮を断熱膨張、断熱圧縮と言います。
断熱の状態で気体を膨張させる断熱膨張では気体の温度は下がります。それは、強制的に気体を膨張させることにより気体内の液体が蒸発、気化するのですが、その相転移の際、周辺の熱を吸収することにより温度が下がります。その際の熱は蒸発熱、気化熱と呼ばれます。
一方、断熱の状態で気体を圧縮させる断熱圧縮では気体の温度は上がります。それは、強制的に気体を圧縮させることにより気体が凝縮、液化するのですが、その相転移の際熱を発するため温度が上がります。その際の熱は凝縮熱、液化熱と呼ばれます。
ヒートポンプでは気体を膨脹させると圧力は下がり、圧縮させると圧力は上がり、それに伴い気体温度が変化するのですが、ボイル・シャルルの法則の「気体は圧力が大きくなると温度は上昇し、圧力が小さくなると温度は低下する。」と他、熱移動については熱力学の第2法則の「熱は熱いものから冷たいものへ移動するが、その逆は成立しない。」に定義付けられています。
又、ヒートポンプでの膨張は膨張弁、圧縮は圧縮機で全てが行われる訳ではありません。膨張弁で気体は高圧側から低圧側へ移動しますが、そこでは気体内の一部の液体が蒸発、気化し膨張し、温度は下がりますが、さらに熱交換器で蒸発、気化し周辺の熱を奪い温度が低下します。同様に、圧縮機では気体を圧縮し気体を液体へ状態変化させ凝縮熱を発生させますが、さらに熱交換器で液化させ熱を発生させ温度が上昇します。
断熱膨張 | 外からの熱の供給がない状態での気体を膨張させ温度を下げる。 |
断熱圧縮 | 外からの熱の供給がない状態での気体を圧縮し温度を上げる。 |
■ 蒸気(飽和蒸気)の断熱膨張と断熱圧縮について |
KENKI DRYER の熱源は蒸気(飽和蒸気)ですが、蒸気での断熱膨張、断熱圧縮は蒸気の圧力の変化に伴い乾き度に影響します。
飽和蒸気の断熱膨張により圧力が低下し温度も下がりますが、蒸気中の液体が蒸発、気化し乾き度が向上し潜熱量、熱量が増加します。飽和蒸気は圧力が低くなるほど温度は下がりますが潜熱は大きくなり、顕熱は小さくなり熱量は増加します。
一方、飽和蒸気の断熱圧縮の場合は、圧力が増加し温度は上がります。しかし、蒸気は凝縮、液化し乾き度が落ちます。圧力増加に伴い温度は上がりますが、潜熱は小さくなり、顕熱は大きくなり熱量は減少します。
飽和蒸気が保有する熱量は、顕熱と潜熱の和であり、その乾き度は蒸気の全熱量に影響します。
例えば、乾き度50%の蒸気は、乾き度100%の蒸気の50%しか潜熱をもっていません。それは同じ熱量が必要な場合、乾き度の50%の蒸気は乾き度100%の蒸気の2倍の蒸気量が必要となります。
その蒸気の乾き度は全蒸気中の気体(気相)部分の重量割合で計算されます。
乾き度[%]=100[%]-湿り度[%]
蒸気の乾き度の違いにより蒸気が持つ潜熱量の比較は下記の表をご参照ください。
飽和蒸気の状態 | 乾き度 (%) | 顕熱 (KJ/kg) | 潜熱 (kJ/Kg) | 潜熱量の対比 |
乾き蒸気 | 100 | 670 | 2085×1.0=2085 | 2 |
湿り蒸気 | 50 | 670 | 2085×0.5=1042.5 | 1 |
ヒートポンプ式乾燥機 KENKI DRYER では、蒸気(飽和蒸気)を圧縮機で断熱圧縮後、その蒸気を KENKI DRYER へ投入し乾燥対象物を加熱乾燥させます。投入蒸気の乾き度は乾燥効率に影響を与えその対策は非常に重要です。